ガジェットと環境音を手がかりに音世界を探知する
電子音楽家、Asunaの記憶をたどる10の小さなピース
魔法陣よろしくさまざまなオブジェ――ゼンマイ仕掛けの玩具、カシオトーン、サンプラー、マイクロフォン、クラッカー、エフェクター、鈴や笛――を円形に配してアマルガムに丸め、そこから徐々にビートやドローンをつまみあげて笛ガム手渡しクラッカーでパンッ!と催眠術を解く。かと思えば実験室の敏腕助手さながらにリードを開放した電気オルガンの脇で時計を見つめドローンを調整する知性。また、100台のカシオトーンを一台一台並べては音を重ね、並べ終わったところでまた一台一台電源を切って無音へと進むオートリバースのパフォーマンス、さらにボディ裏にスリントのステッカーが貼ってあるフェンダー・ジャガーのピックアップ切り替えスイッチを細かく入切して音を点滅させる点描音楽家としての姿…。
ほかにもアヴァン・ロック・バンド、HELLLの一員として、また、近年ではGofishトリオへの客演、シバタ(ボルゾイ)とのデュオ(SHIBATA & ASUNA)、佐藤実、沖啓介とのValve/Membrance等々、数多いコラボレーション・ワークだけでなく、その合間を縫って来日アーティストたちのライブ・ブッキングにも奮闘する。さらにカシオトーン・コンピレーション・シリーズやミディアム・ネックス、加藤りま等をリリースするレーベル、ao to ao/W.F.T.TAPESを運営する八面六臂の電子音楽家。
デビュー10周年というアニバーサリーとなったリリース前年の2013年は、名作『Each Organ』のリイシューから始まって、5年ぶりのアルバム『相原1825、シティハイム桐B-207』リリース、さらにかねてより親交の深い畠山地平のレーベル、ホワイト・パディ・マウンテンからのアルバム『Valya Letters』もあるという今までにないリリース・ラッシュ、その中にあって本作「Butterflies」は名アルバム『Flowers』の意匠を受け継ぐ愛すべき小品と言えるでしょうか。
1981年以降、Asunaが聴いた音の断片を追想/追走する小さな小さな記憶の玉、この珠玉の10ピースはしかし、彼の感性や美意識をもっともよく表しているかもしれません。宙に舞う10羽のシジミ蝶、きっとあなたのどこかに止まるでしょう。
アーティスト:Asuna(アスナ)
タイトル:Butterflies
発売日:2014年1月15日
フォーマット:7インチ・アナログ・レコード(33回転)
収録曲数:10曲
パッケージ:横入れ厚紙ジャケット+1枚1枚に2013年冬のヨーロッパ・ツアーのお土産等を封入
アートワーク:
安野光雅
デザイン:Asuna
Side A
1. Don't Dance Yet
2. Asuna Step
3. Tuning March
4. Playgroundtrot
5. Penguin Beats
6. Nap Tempo
Side B
1. After Years
2. Rooftop Lunch Break
3. Waiting for Call
4. White Butterfly