mmmやoono yuuki、麓健一、王舟をギタリストとして支えるSSW
フジワラサトシ待望のファースト・アルバム
ちょっと低い声で、しかし朗々と歌い上げる、というのも違う。押しつけることなく、むしろ内側を満たしていくような歌声、そしてその内側のぬくもりをゆっくりと確かめていくような室内楽アンサンブル。mmm、oono yuuki、麓健一、王舟ら、いわばサウンド・オブ・ヤング・トーキョーな面々をギタリストとして支えてきたシンガー・ソングライター、フジワラサトシ、彼のリーダー作品としては鳥獣虫魚からの7曲入りCD-R『夜に生まれる』(2010年)がありましたが、さて、ここにようやくプロパーなファースト・アルバムが完成しました。
録音メンバーは2010年からの編成となる宮本善太郎(ds)、shibacoji(cello)、kyooo(violin)、イノウエユキコ(p)の4人、そこにコーラスでmmmと雪舟えまも参加し、さらにその場の空気・響きをうまくとらえた録音・ミックスはおなじみ稲田誠――BRAZIL、PAAP他、録音作品にはゑでぃまぁこん『綿の煙の招待状』、Gofish『とてもいいこと』、TEASI『壁新聞』、シラオカ『部屋』等がある――を起用、と、これ以上ない布陣での1枚です。
しかし、そこは寡黙なフジワラサトシのこと。派手な話題や聴き触りの代わりに、ゆっくりと雪を溶かして芽を吹かせるような、そんなスローモーションの魔法をそっと披露してくれるのです。地表を割って頭を出した彼の哲学のようなもの、その地中に広がる思考の重なりと重み…、その両方に思いを寄せることが『い、のる』の聴き方なのかもしれません。
同時代の洋邦インディー・ロックとの比較対象ではなく、むしろポール・ブキャナン(ブルー・ナイル)やリアム・ヘイズ(プラッシュ)といった息の長いシンガー・ソングライターの系譜に浮かばせてみたい存在感。さて、スウィート・ドリームス・プレスにまたひとり新しい家族が加わりました。きっと彼の名前は今後もっともっと羽ばたいていくでしょう。夜の鳥のように暗闇を斜めに真っ直ぐ切って……。それがフジワラサトシの音楽です。
アーティスト:フジワラサトシ
タイトル:い、のる
発売日:2013年4月25日
フォーマット:CD
パッケージ:E式紙ジャケット(変形ダブル)
ライナーノーツ:田口史人(
円盤)、雪舟えま
アートワーク:nico
Tracks:
1. 祈り
2. 夜の鳥
3. night lights
4. 波
5. 無題
6. 夏の虫
7. この今
8. モーニングのテーマ
External Link:
Satoshi Fujiwara Soundcloud