2015年、松井一平の個展「闇を灯すな」のために制作された交歓の記録。灯されない闇、灯されてしまった闇がゆっくりと溶けていくディープ・アンビエント
2015 年2 月、大阪のギャラリー
iTohen(いとへん)で開催された松井一平の個展「闇を灯すな」、その展示のために、松井一平、元山ツトム、YTAMO の3人で往復書簡よろしく録音していた音源がついに陽の目を見ることになりました(なお、展示期間中には上記3人によるライブ演奏が披露されています)。
つまり「闇を灯すな」の視覚世界を音で支えたのが、この「don’ t light up the dark」という39 分に渡る壮大なトラックです。松井一平のエレクトリック・ギター、元山ツトムのペダル・スティール・ギター、そしてYTAMO のピアノとエレクトロニクス。闇の中、感覚だけを頼りに扉を開け露わになった世界とは? 灯されない闇/灯されてしまった闇が二重写しになるかのように、おぼろげに揺らぎながら、しかし現実音に肩を叩かれてハッと我に戻る。この揺らぐようなほの暗い行灯の音楽は、同時に手探りで進む喜びをあなたに伝えてくれるでしょう。
個展タイトルとなっていた「闇を灯すな(don’t light up the dark)」は洞窟に群生するコウモリからの松井の着想でした。静かな暗闇の中の営みを侵入者である自身が光を照らすことで壊してしまったことの不安や葛藤。動かなかった世界に持ち込まれてしまった動く光の束。反面、本作のアートワークとして一部が使われている同タイトルの絵画作品を見ると、そこにあるのは驚くほどビビッドな色彩だったりします。静かに息をひそめていた生命力、世界を包み込む闇の雄大さ。そして、じっとそこに佇み続けた力強さと撹乱者に抗う意志、さらには光が当てられることで何かが終わってしまった取り返しのつかない瞬間の美を、「don’t light up the dark」は刻々と聴く者に渡していきます。どこにもない大きな深い洞窟、その闇の中、恐れず身を横たえる音楽がここにはありました。
アーティスト:松井一平、元山ツトム、YTAMO
タイトル:don’ t light up the dark
カタログ番号:SDCD-028
発売日:2016年5月15日
収録曲数:1曲
パッケージ:特製E式紙ジャケット(窓付き/ダブル)/厚紙インサート・カード
*上の映像作品は本CD「don't light up the dark」未収録の音源(アレンジ:YTAMO)と松井一平の新しいアートワークで構成した独立した映像作品となります。
松井一平(まついいっぺい):これまでにMANIAC HIGH SENCE、
OUT OF TOUCH、現在は
TEASI、
わすれろ草、
BREAKfAST、ネス湖といったバンドで活動。アーティストとしても作品の制作や展示、レコード、CDや書籍などの装画も手がけている。
元山ツトム(もとやまつとむ):
ゑでぃまぁこんのペダルスティール奏者。現在は並行してシャラズルタラリ、ソロでも数多のライブ/セッションに参加。過去にはOUTO、
RISE FROM THE DEAD、GRIND ORCHESTRAなどのメンバーとして活動していた。
YTAMO(ウタモ):2000年より活動を開始。ソロと並行して
ウリチパン郡、オオルタイチ+ウタモなどを経て、現在は
オオルタイチとのユニット「ゆうき」を始動させている。11年ぶりのソロ・アルバム『
MI WO』を4月にリリースしたばかり。
Tracks:
1. don’t light up the dark
Extended Links:
松井一平
元山ツトム
YTAMO