淡く優しく乳白色に透き通る傑作アンビエント/フォーク
悲しみの向こうで新しい光に包まれるTJO最新作
「慈愛に満ちた」というような表現すら似つかわしく…、タラ・ジェイン・オニールの7枚目のアルバムはまるで菩薩のようにいつくしみに満ちたアンビエント/フォーク作品となりました。伝説的なポスト・ハードコア・バンド出身の孤独な女性SSW、彼女のパブリック・イメージは本作で修正を余儀なくされるかもしれません。もちろんトレードマークともいえる吐く息の白さのような親密さ、嘘のなさ、迷宮のようなギター/音響加工は健在ですが、しかし、本作で彼女が明らかに新しいステージに立ったことは音の端々から聴いてとれるはずです。癒しの音楽から癒すことそのものの音楽へ、生き残る音楽から生き残ることそのものについての音楽へ、変る音楽から変ることそのものの音楽へ、彼女の視線は大きく、そして強く研ぎすまされました。
先述した伝説的バンド、彼女が在籍したロダンのメンバーのふたり――ジェイソン・ノーブルとジョン・クック――を立て続けに失くしたこと、またオレゴン州ポートランドからカリフォルニア州ロスアンジェルスへ引っ越したこと、そういった自身のプライベートの変化も本作にまつわるトピックのひとつかもしれませんが、しかし、それよりもさまざまの経験をとおして彼女の錬金術がこうしてまた傑作を生み出し得たことをこそ私たちは驚嘆すべきでしょう。
受け入れること、歩みを止めないこと、涙を流すこと、ほほ笑むこと。タラ・ジェイン・オニールは新しい光がともる場所へと到達しました。彼女とその仲間たち――ティム・バーンズ、アイダのエリザベス・ミッチェル、ダン・リトルトン、アイダ・パール、ジュリア・ホルター作品に参加するコリー・フォーゲル、ウォーレン・デフィーヴァー(ヒズ・ネーム・イズ・アライヴ)――の松明に導かれ、聴く者も共に闇の中歩を進めていく。それがこの『ウェア・シャイン・ニュー・ライツ』なのです。
アーティスト:タラ・ジェイン・オニール(Tara Jane O'Neil)
タイトル:ウェア・シャイン・ニュー・ライツ(Where Shine New Lights)
発売日:2014年1月20日
収録曲数:15曲(日本盤ボーナストラック3曲)
パッケージ:A式紙ジャケット(シングル)
アートワーク:タラ・ジェイン・オニール
ライナーノーツ:
西山敦子、福田教雄
歌詞対訳:西山敦子
Tracks:
1. Welcome
2. Wordless in Woods
3. This Morning Glory
4. Over. Round, In a Room. Found.
5. Glow Now
6. The Lull the Going
7. Elemental Finding
8. All Now Vibe
9. The Signal, Wind
10. The Signal, Lift
11. Bellow Below as Above
12. New Lights for a Sky
13. Signal Anthem
14. Kelley Point
External Link:
Tara Jane O'Neil official website